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湘南モノレール衝突事故が解明された

関連@湘南モノレール衝突に関する記事一覧(当サイト内)
   └──事故当時の記事などはこちら。

NIKKEI NET(日経ネット):社会ニュース-内外の事件・事故や社会問題から話題のニュースまで


 報告書によると、事故車両は送電された直流電流を交流に変換する「VVVFインバータ」を
2台設置。内部のソフトウエアでモーターを制御しているが、1台でノイズと呼ばれる電磁波が
発生。加速状態から切り替わらず、ブレーキをかけても止まらなくなった。
 運輸安全委は、この車両のノイズを逃がすアース方法が特殊だったことなどから「ほかの鉄道
で誤作動の可能性は低い」とする。だがソフトウエアの不調は発見が遅れがちのため、ブレーキ
が利かないときは電気の流れを止めるなどして列車を停止させることを運転士に周知徹底させる
よう国土交通相に求めた。

湘南モノレール:オーバーランは部品誤作動 安全委報告書 - 毎日jp(毎日新聞)


 報告書によると、列車は湘南深沢駅を出発後、運転士がハンドルを加速位置にしていないのに
加速。

なお、4ノッチから1ノッチ、又は2ノッチに戻すと、走行速度が15km/h以上の場合は操作時の速
度を基準として一定の速度を保つ定速モードに入る仕組みとなっている。

東京新聞:湘南モノレール暴走事故 電力変換装置 誤作動:社会(TOKYO Web)


 報告によると、事故車両は変換装置のノイズ(電気信号の乱れ)の影響で、加速状態から切り
替わらなくなった。


公式資料、報告書はこちらです。P.108ページあります。【】内は私の補足です。
事実情報という項目には、当時の状況が再現されています。
運輸安全委員会 鉄道事故インフォメーション 湘南モノレール事故


ブレーキ5ステップから力行1か2ノッチにすると列車が急加速したため、ブレーキ2ステップに入
れて列車を減速させて速度約20km/hで#32分岐器を通過した。その後ブレーキを緩めると、勝手
に走ってしまうようだったのでブレーキ2か3ステップに入れながら速度を調整して走った。

西鎌倉駅下り場内信号機付近で、本件運転士が「ブレーキが効かない」と言ったので本件運転士
の方を見ると、確かにマスコンは非常ブレーキ位置にあったが、体感ではブレーキがほとんど効
いていない状態であった。急いで右側にある非常ブレーキ引きスイッチを扱ったが、減速する感
覚はほとんどなかった。

ブレーキ指令はすべて電気指令となっている。常用及び保安ブレーキは指令線の加圧で動作し、
非常ブレーキは常時加圧された指令線が無加圧となることで動作する。

「運転士知らせ灯」とは、運転士にドアの開閉状況を知らせる表示灯をいい、すべてのドアが閉
じているとき に点灯し、ドアが1箇所でも開いているときに消灯する。

フィルタコンデンサ低電圧及び高速度遮断器16の自己遮断の故障記録があり

高速度遮断器自己遮断の約0.15秒前に、架線電圧が約1,600Vから約91Vに急低下し、その約0.02
秒後に瞬間的に約1,765Vに上昇した後、約0Vになった。【後述で衝突による停電と明記されている】

5503号のVVVFインバータは正常に力行オフとなったが5504号のVVVFインバータのみ力行が継
続するという異常動作が再現した。

5504号のVVVFインバータのみが、マスコン指令などを新たに認識しない状態になり、異常発生
直前の動作を継続した。

VVVFインバータ内のゲート電源装置の高周波ノイズが、同装置の電源マイナス極側である100a
線に重畳した。

運転台マスコ ン内部や低圧ツナギ箱内部に通電部が露出している端子があり、これらの周辺にア
ルミの切粉、未使用のビス及び素線等が相当数あったこと、及びマスン内部や低圧ツナギ箱内部
で力行指令線に直流100Vを強制的に混触させたところ、通電痕が残らずに本件編成の2台のVVVF
インバータが2台も指令を認識したことから、‘切粉等により混触が発生した可能性’

これらのことから、もし、本事故時の異常な力行が混触等により発生したとするならば、本件運
転士が2ノッチで力行しようとしたが誤ってマスコンを3ノッチに投入し、そのときに3線1本の混
触が発生したために3ノッチ相当の力行が継続したとするのが妥当であると考えられる。

ノッチ曲線では起動直後の高いトルク指令が出ていたものと考えられる。【この力行状態が継続】

[事故時の減速度]=[駆動力による加速度]+[ブレーキ力による減速度]+[走行低抗による減速度]

車両調査の結果からは本事故時における異常な力行が「混触等による力行指令」により発生した
可能性を完全には否定できなかったが、本件列車の西鎌倉駅通過時の加減速度に関する分析結果
から、本事故における異常な力行は、「混触等による力行指令」により発生したものではないと
考えられる。

[-2.3~-0.4]=[2.0~2.6]+[-3.8~-2.5]+[-0.5]

本件列車の異常な力行は「5504号のVVVFインバータのマスコン認識不能」による可能性がある
と考えられる。

各低圧機器のマイナス極と車体間の接地線には断面積の大きな電線を使うことや車体との接続位
置を近づけるなど、抵抗を小さくすることが望ましい。

本件編成のように装置に未使用の伝送回路があり、それが運転保安上重要な機器に影響を与える
可能性があるものに対しては、マスコン指令などの入出力線と同一のケーブル内に艤装しない、
ツイスト処理をする、終端処理をするなど、ハードウェア側での対策や、未使用回路の信号をプ
ログラム上で無効とするなどのソフトウェア側での対策をしておく必要がある。

WDTは機器の故障発生時における安全確保に重要な役割を果たしていることから、本件電機メー
カーは、WDT及びその関連プログラムのように車両を制御する上でフェールセーフ機能を持つべ
き重要な箇所の設計に際しては、その機能が発揮されないような条件の抜けがないように慎重に
検討すべきである。

車両におけるEMCの問題に関しては、車両と機器を組み合わせてノイズの影響などを総合的に検
討する視点が必要であるが、鉄道車両では一般的には引き通し線の艤装等の車両の設計・製造と
パワーエレクトロニクス機器や電子機器等の設計・製造は、異なるメーカーや部門で担当してい
ることが多いため、車両と電機器を総合的にとらえてEMCについて検討することが行われにくい
状況であると考えられる。このことが、本件列車のVVVFインバータの電磁ノイズによる誤動作を
未然に防ぐことができなかっことの背景にあった可能性があると考えられる。

本件運転士は本件列車の異常を認めた後も運行を継続した。モノレールは大半が高架軌道を走行す
るため、駅間停車を避けたいという事情はあるものの、本事故のようなブレーキ力の低下につなが
る車両トラブルは、旅客の死傷事故に直結する可能性があることから、運転士は異常を認めた場合
は速やかに列車を停止させ、その後で列車を移動させる場合は安全を担保した状態で行うべきであ
る。

本件運転士及び本件車掌の口述から、衝突時には相当の衝撃があったものと考えられるが、乗客に
負傷者がなかったことについては、乗客が全員着席していたこと、及び本件車掌が衝突直前に乗客
に対し、衝突に備え手すり等につかまるように注意喚起したことによるものと考えられる。

対向運転士及び対向車掌は、ともに脱出袋を実際に使用するのは初めてであったが、乗客の救出が
比較的スムーズに行われたことについては、2.10に記述したように、同社が年2回の頻度で、現車を
使用した訓練を実施していたこと、及び警察、消防の迅速な対応があったことによるものと推定さ
れる。

加減速を制御するプログラムに不備があったため、不正割り込みにより加減速シーケンスが処理さ
れないという異常が発生したときには、主回路の電流をいったん遮断してからVVVFインバータを
再起動させるというウォッチドッグタイマによる保護動作が働かない状態になっていた。

VVVFインバータ搭載車等、加減速制御にソフトウェアを使用する鉄道車両においては、ソフトウ
ェアの処理異常によって、車両が運転士のマスコン操作に反して力行を継続した場合、車両に異音
や異臭などの兆候がみられないため、運転士が異常に気付くのが遅れる可能性が考えられる。した
がって、本事故事例を運転士に周知し、列車の異常な力行やブレーキ力低下を認めた場合は直ちに
列車を停止させることを再徹底すべきである。

平成20年6月に、非常ブレーキを作動させても減速感がない場合には「レバースハンドル19『切』」
とすることを指導し、同7月に電車運転士作業基準を改訂し、同内容を「非常の場合の処置」に加え
た。

VVVFインバータの加減速制御プログラムに、非常ブレーキが投入された場合に主回路をしゃ断す
る処理を追加した。

資料を見ると、なるほど、というどこにでも起きそうなソフトウェアの問題が散財しています。
システムのフローチャート、定員時や満員時のブレーキ圧などの情報も載っています。
基本的には、すべての動作において、安全側に落ち着くように設計されている事がわかります。
例えば、「戸締まり灯の消灯」は「ドアが開状態」を示し、「走行は危険」であることを意味し
ますが、これが単なる球切れもしくは回線切断だとしても、「走行は危険」を示す設計になって
います。しかし、今回は想定外のノイズの割り込みで力行が継続される自体が発生しました…。

事故については、要約すると次の動作で起きたことがP.42、P.64に明記されています。
事故車両のVVVFインバーターは、割り込みの指令が入ると現在の動作を継続する仕様となって
います。
・力行にする
・5504号のインバーターにノイズが入る
・ノイズを割り込みの指令と認識する
・リセットされる
・割り込み前のインバーターの動作すなわち力行に復帰継続する
・マスコンの指令を無視
・力行状態

湘南モノレール

○お知らせ
日頃、湘南モノレールをご愛顧いただき、ありがとうございます。さて、昨年2月24日、西鎌
倉駅構内で列車のオーバーラン事故を起し、お客様にご心配とご迷惑をおかけしましたことを、
改めてお詫び申し上げます。
事故の発生以来、当社は国土交通省運輸安全委員会のご調査に協力して原因究明に当ると共に、
判明した事実に基づく車両の安全対策および乗務員の安全教育を行って参りましたが、本日(6月
26日)運輸安全委員会より、この事故の「鉄道事故調査報告書」が公表されました。当社におき
ましては、この報告書を厳粛に受け止め、こうした事故を二度と発生させないよう再発防止に向
け全力を注ぐと共に、鉄道輸送のさらなる安全性向上に努力を続けて参ります。

平成21年6月26日
湘南モノレール株式会社


工業製品は単純な動作の組み合わせで複雑になっています。
この事故の報告だけでも、相当数の技術情報が詰まっていると感じました。
インバーター搭載のモーター駆動車の事例としてP.90のノッチ曲線のデータが参考になりました。

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20090702追記
東京新聞:プログラム改良など対策 湘南モノレール事故会社がまとめる:神奈川(TOKYO Web)
---
湘南モノレール労組 スタッフのブログ(仮設)
こんなのもあるんですか。


// 重大インシデント 車両の電磁ノイズ環境 テンパーカラーはP.89 ノッチ曲線はP.90 ウォッチドッグタイマー

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