
以前の記事では、環境問題の本質(当サイト内)に関するまとめを述べました。今回の記事では、
その繋がりを持ちながら、日本の持つ構造的なパワーを読み解きます。具体的には(アメリカの
対日)年次改革要望書や対日超党派報告書を取り上げて、日本の強さを読み解きながら、アメリ
カの対日要求や情報の扱い方について考えます。
※記事中では、双方の動きを戦略として捉えているので、日本vsアメリカの視点で見ていきます。
○はじめに
これらの本は、日本を分析したアメリカ人の著書です。日本と関係を持つアメリカにとって、その相
手である日本の実情を知ることは意味のあることです。なぜ、私がこの本を選んだかというと、彼ら
から見た日本がどのようなものであるか疑問に感じたのと、これほどまでに資源がない国が何をも
って経済大国になり得たのか、そして日本の柱である工業との関わりが気になり、日本に隠された
力を探るために見つけ出した本です。日本の政治・統治構造などについて書かれた本は複数あり
ますが、日本の経済発展を中心に、その関連要因が次々と書かれている本は見当たりませんでし
た。この本(ジャパン・アズ・ナンバーワン)は1970年代に発表された本を翻訳したものです。同年代
を駆け抜けた人たちや社会で活躍されている方々には、目新しさを感じなかったり、現在の実情と
乖離していると感じる内容かもしれません。しかし、そうした時期に生まれていないような、私を含め
た世代には、日本の成長を知るためにオススメできる本です。また、この本の著者でもあり、かつて
は日本を通して数々の戦略を引き出していたヴォーゲル氏は、今は中国に注視しているといいます。
本の中では、日本の構造をアメリカで活用するために、日本の良い部分を紹介している点を頭に入
れておく必要があります。日本的経営手法という観点からも面白い本だと思います。翻訳者が元環
境庁長官を務めた女性であることも、自然・環境問題に関心がある者としては注目する点です。文
中に日本の特徴として「多目的集団の団結」とありますが、これこそが日本の強さの一つでしょう。
こうした日本の持つ極めて効率の高い構造を世界に対してアピールすると同時に、より良い構造を
見つけ出す最良の環境の中にいることを自覚しつつ、本を読み進めました。ある意味で残念なのは、
この本の著者がアメリカ人であったところに、日本人自身が見ぬけていない日本の重要な構造があ
るのではないかと気になって仕方がありません。日本が強い部分も弱い部分も、基礎的な知識のバ
ックグラウンドががないと認識できません。導入として、非常によくまとまっている本でしょう。
本(ジャパン・アズ・ナンバーワン)の要約になりますが、
○日本が力を最大限発揮できる条件
・組織としての団結によって、お互いの信頼関係を基に、長期的な安定という目的意識を共有できること
・組織間の綿密な調整が無駄な反発をなくし、効率的に物事を進めている
これらの条件を満たすことで、少ない資源(ということにしておきます)で諸外国に対抗し得る競争力を
持つことができます。
では、どのようにして、このような条件が形成されたのでしょうか、ちょっと考えてみました。
○組織の団結を生み出した文化的背景とは何か
荘園制度に発した仕組みと関連性があるのかを判断できるまでの知識は持ち合わせていませんが、
決まった領域の中で、田畑や用水路の計画などをどのように最適化させるのかを調整し合い結論を
導き出す、この合意形成のあり方は、非常に脱中央集権的で自発的な管理手法です。最近では「人
と自然との関わり合いの中で持続可能な地域にしていく」という、ピーター・バーグ氏が提唱した
生命地域主義があります。風土という本もオススメします。
○日本が世界とは一風変わった歴史を刻んだ文化的背景とは何か
日本文化の形成を担った代表は、言語ではないかと推測しています。世界的にも類を見ない独特な
日本語は、かなを積極的に用いた女性によって発展したということですが、漢字・ひらがな・カタカナ
が融合して定着し、現在に至るまでに柔軟な表現能力を有すようになりました。生活に密着した形で
融合や変化を繰り返す中で、こうした対応する力を付けたような気がします。他国が、日本の構造を
容易に真似ることのできない要因のひとつに、日本語の存在があるのでしょう。
○今後の展望
地球という環境(空間)の中で、国と国どうしが貿易などで因果関係を持ちながら、時は進んでいきま
す。各々の利益を求める国に加わり、最近ではNPOやNGOのような組織が、国という枠組みを超え
て地球規模の利害調整を行う試みが活発化してきました。この動きは、過去には見られないほど壮
大で広域なものですが、その構造は日本が従来から持っていた組織による団結と調整の働きと似た
構造が見られます。このような構図が理解できれば、日本が長期にわたって培ってきたノウハウは世
界においても通用することは明らかであり、グローバル化の時代において、日本が積極的な行動を求
められることは必然的な方向性となります。また、世界が効率的に働くことで、貿易黒字を得るのは日
本であり、世界的に安定した経済交流があること、つまり平和に経済活動が行われることが日本の利
益と合致し、これこそが日本の掲げている「平和」の本質であり、日本が行うべき国際貢献となります。
グローバル化は、日本の歴史の再発見を促し、各地域で行われている伝統文化こそが、環境問題を改善、
そして解決するための糸口を提供することは言うまでもありません。情報化社会というと、誰もが簡単
に素晴らしい結果を得られるように考えられがちですが、その中身は質と量に依存した過去の情報が蓄
積されたデータベース(歴史)です。競合に勝る最適な合理的判断を下すには、過去の歴史が最大の資
産となります。日本に足りないのは、未来を描く力です。一説には、マーケティングの力と言われてい
ます。
○日本としての対策、やってはいけないこと
・正社員の待遇を悪化させること
○日本としての対策、やるべきこと
・正社員の待遇を悪化させずに、底上げ
・従来からの組織と団結の力を活かす
・利益は社員に還元する
○様々な要望書・要求書・報告書が公開されている
アメリカ側から見た日本の強さを俯瞰した上で、次のような要求と戦略に目を通してみましょう。
これらは全世界に公開されているもので、誰もがアクセスできるものとなっています。
しかし、マスメディアがなかなか伝えていません。
・(米国による対日)年次改革要望書
拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)の著者が、建築に関する論文を書い
ているときに、偶然発見したのが「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政
府への米国政府要望書」で、通称「年次改革要望書」です。この年次改革要望書は、アメリカが日
本語の翻訳を用意してくれていますので、誰でも見られます。動画サイトで「関岡英之 書くに当たって」と
検索すると彼の主張が動画で見られます。これは参考程度に。
関連@年次改革要望書 - Wikipedia
こちらの下の方に年次改革要望書のPDFへのリンクがあります。
・(米国による対日)超党派報告書
関連@ジョセフ・ナイ - Wikipedia
関連@CSIS Publications - The U.S.-Japan Alliance: Getting Asia Right through 2020(対日超党派報告書)(*アドレス変更、後述を参照)
関連@さてはてメモ帳 Imagine & Think! : 東シナ海ガス田の共同開発問題
ナイ氏は、日本の実情を適確に分析し、日本にとっては手強い相手ではないかと思います。上のブ
ログで彼の論文の日本語版要約が見られます。原文はCSISから探してきました。
○まとめ
欧州スタイルの、雇用切り+雇用保険の目まぐるしく変化する組織では日本の競争力は維持できない
ことは明らかです。お互いの信頼に基づいた関係を保たなければ、効率は低下します。
○補足
この記事は、「年次改革要望書」の存在を知った昨年の10月頃から手をつけていましたが、なかなか
他人へ伝わるような形で書けなかったので、放置していました。そこで、読み解くきっかけとなる本
(ジャパン・アズ・ナンバーワン)の存在を知り、年末あたりに読んでみました。分析された時代は
昔になりますが、今なお残されているシステムは数多くあります。経済危機・雇用・環境と時代を象徴
する文字が毎日のようにニュースで流されますが、どうも横断的に捉えた見方がないのが残念です。単
純な構造ではないので、厳密な表現を求めると難しくなりますが…。元原稿は、この記事よりも色んな
情報を取り入れて書いてみましたが、収拾ががつかなくなったので事例等を大幅にカットしてみました。
本の紹介ということにしておきます。
関連@環境問題の本質についての記事一覧(当サイト内)
// 日本の強さ 対日要求 対日要望
// 環境問題 Ezra F. Vogel Japan as Number One Japan as No.1 ソフトパワー 分割統治 道州制
// 分配型交渉(ゼロサム交渉) 統合型交渉(ノンゼロサム交渉)
// 相転移
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なかなか変わった本なので、半年くらい様子見をしていましたが公開することにしました。
0810記事ネタ発見
0812本
0901記事起草
090308記事再構成
090503記事発行
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0905追記
米駐日大使にルース氏を指名 米政府、夏にも赴任(日経)
さて、駐日大使がナイ氏からルース氏に変わったということで、アメリカの日本に対する姿勢が
大きく変化したようです。アメリカは日本の次期政権を読んでいる気がしてなりません。
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0906追記
駐日米大使候補にジョン・ルース氏が浮上――ワシントンの反応を探る: Kストリートの交差点
米駐日大使 ジョン・ルース氏の起用 | リスクウォッチャー軒猿
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0607追記
報告書のアドレスが変更されています。
The U.S.-Japan Alliance | Center for Strategic and International Studies